2010年01月02日

はじめに、もしくはアバンタイトル

あらゆるところに「映像メディア」は存在しています。

空に星があるように、テレビに、銀幕に、パソコンに、携帯電話に「映像」はあります。プリント・メディアからエレクトリック・メディアへと変貌を遂げた20世紀。そしてこれから生きる21世紀は、「映像メディア」なくして、決して語れない時代となりました。

さらに、2011年に始まる地上デジタル放送、ワンセグ、そしてインターネット放送はギョーカイ全体に地殻変動を促し、あらゆる面で私たちの生活を変えようとしています。そんな「凄そう」な「映像メディア」とは一体なんなのでしょうか。

・・・と書くと、何やら難しそうなことが始まる感じもしますが、本書はこうした激変の時代を生きる、新たな「映像メディア人」を育成するために開設された「難しい話を分かりやすく、面白く」する大学の講座を基に書かれたものです。テレビのタイトル風に言うと「必見!立ち見で伝説となった大学講義から生まれた衝撃の一冊!」といったところでしょうか。いや、立ち見はホントですけどね。

何はともあれ、現場の声にこだわりました。映像メディア、特にテレビを中心とした制作現場で働く現役のスタッフ(かくいう私もその一人です)が、普段から考えていること、感じている問題点を余すところなく記したのが本書です。

先日、赤ちょうちんで一杯やっている時に、こんなことを叫んでいる、いかにもギョーカイ人風の若者集団を見かけました。

「テレビなんて、もう死んだんだよ。」

「なんで?」

「テレビなんてなぁ、バカしか見ないんだよ。貧乏なバカが喜ぶような番組ばっかり作ってるから、カネを持ってる頭の良い視聴者はどんどんテレビを見なくなって、スポンサーも離れていって、制作費もどんどん削られて・・・、これがホントのバカスパイラル・・・

ふーん、上手いこと言うなぁ・・・と思った反面、じゃあ君のいう「バカ」を相手にしない番組を作ろうとしたことはあるの? と思わず聞きそうになりました。そんなことを聞くと喧嘩になりそうだったので止めときましたけど。平和主義者なんで。

赤ちょうちんでの「彼」の発言は、ちょっと極端ですが、何となくギョーカイの人間が似たような危機感を頂いているのも事実です。番組制作費はどんどん削られているし、安い仕事ばっかりでやってもやっても終わらないので、また家に帰れないし、テレビを見る人の数そのものが減っているから、視聴率もそんなに上がらないし、新しく入ってきたアシスタントディレクター(AD)もまた2日で辞めちゃうし。産業自体が斜陽なんだよな・・・もうダメ終わった・・・という感じです。しかし何よりも問題だと感じているのは、制作者自身がそのように悲観しているようなメディアに未来も将来もない!ということです。

映像メディアの世界は広がる。

そう私は確信しています。そのためにはギョーカイの現状認識と問題点の整理、何よりも基礎的な「技法(skill)」の修得は必要不可欠な要素だと考えています。激変し、確たる将来像を描くことが困難な映像メディア業界ですが、これらの正確な知識を身につけていればこそ、チャンスも未来も拓けるのだと言えます。

本書はそうした映像メディア業界の「羅針盤」となるべく、「ギョーカイの構造(第1部)」と「制作のノウハウ(第2部)」を体系立てて知ることができる、これまでにない「1冊」を目指して執筆しました。また、どこからでも参考書風に読めるように、章毎のタイトルを極めて分かりやすくまとめてあります。例えば「第2部3章 撮影」は、撮影に関することしか書いてありません。当たり前ですが。コラムや用語集も「読み物」として充実させるように心掛けました。本文を読まずに、用語集から読み始める、なんていうのもアリです。

最後に。

本書はデザイナーさんにお願いして、意識的に空白を多めにとった構成となっています…と言っても内容が薄いというわけではないのでご安心を。

本文にドンドン線を引いて、ガンガン書き込みをして、この本を汚してください。そして自分だけの「教科書」を作成していただければ幸いです。


テレビディレクター 奥村 健太
posted by eizomedia at 16:32| Comment(0) | TrackBack(0) | はじめに